任意後見:認知症で物事の判断がつかなくなる前に、信頼できる人にお金の管理を任せたい。

任意後見契約書原案作成のご依頼でした。

●依頼者

80代 男性

●ご相談内容

今はまだしっかりしているつもりだが、だんだん自分の判断能力に自信がなくなってきた。

認知症になったときに財産の管理などを任せられる人がいないので、とても心配だ。

●判断能力が衰えたら…

認知症などによって判断能力が衰えると、どうしてもお金の管理は難しくなります。

必要のないものを大量に買ってしまったり、不当に高額な商品を売りつけられる、といったケースも考えられます。

そんなことが無くてすむよう、人に財産の管理を任せるために設けられているのが、成年後見制度です。

●成年後見制度とは? ~法定後見と任意後見~

成年後見制度には法定後見と任意後見があります。

法定後見は本人の判断能力の程度により「後見」「補佐」「補助」の3種に分けられます。

これらはいずれも判断能力が衰えた「後」に手続をするものです。

対して、任意後見は判断能力が衰える「前」に、信頼できる人と契約を結ぶものです。

後見の内容も当事者間の協議によって比較的自由に決められます。そのため、様々なケースに柔軟に対応できるのが特徴です。

今回のような、

「判断能力があるうちに信頼できる人に財産管理を任せたい」

といったご相談の場合、任意後見の利用をご提案しています。

●ご相談後の流れ

今回のお客様は「この人にお願いしたい」という方が既に決まっておいででした。

そのため当事務所では、お二人を契約当事者とした任意後見契約書を作成しました。

任意後見契約書は公正証書である必要があるため、正確には契約書の「原案」です。

白紙の状態から公正証書を作るには、公証役場で何度か打合せを行う必要があります。

この点、専門家に契約書作成を依頼すれば、公証役場に出向く回数を最小限に抑えることが可能です。

当事務所では、原則として、財産の管理等をお任せできる方が既にいらっしゃる状態でご相談いただくことをお勧めしております。どうしても周囲にお任せできる方がいらっしゃらない場合は、当事務所行政書士が後見人をお引き受けすることも可能です。

交通事故:症状が残っているのに事故後2ヶ月で治療費打切り

「交通事故から2ヶ月。まだ痛いのに治療費が打切られそう。治療は続けられないの?」

●依頼者(交通事故被害者)

40代男性 会社員

●ご相談内容

交差点で一時停止中、後ろから来た車に追突された。

交通事故の発生から二日後、整形外科を受診し、

外傷性頸部症候群、頸椎捻挫、腰椎捻挫、胸椎捻挫の診断を受ける。

その後は、仕事帰りに接骨院に通院していた。

現在、通院期間は2ヶ月程度。相談時点で、まだ痛みは残っている。

しかし、相手方任意保険会社からは

「今月分までしか治療費は払えない」

と言われた。

私としては、症状が残っている以上は通院を継続したいのだが、
今後の治療費は自分で負担するしかないのだろうか。

●はじめに ~弁護士の先生との関わり~

本事案は、交通事故被害者と任意保険会社の間で治療費の支払いについて意見の不一致が見られるものです。

このような、保険会社との争いが顕在化している事案については、当事務所へのご相談と併せて、必ず弁護士の先生にもご相談いただくようお願いしております。

当事務所では、本事案のようなケースに関しては、弁護士の先生が「被害者請求すべき事案」と判断されたものにつき、行政書士の業務範囲内において自賠責保険への提出書類の作成を承っております。

加害者及び相手方任意保険会社との示談交渉や損害額の算定は行政書士としてお引き受けすることができません(弁護士法第72条)

●治療費打切りと言われたら

本事案は、交通事故被害者が、任意保険会社の負担で治療を受けていたが、まだ症状が残っているのに、一方的に治療費の打切りを宣告されてしまった、というものです。

交通事故被害者にとって、治療をうけられるかどうかは、将来の日常生活に影響を及ぼす、大切な事柄です。

症状が良くなる見込みがあるならば、治療を受けるに越したことはありません。

ここで「任意保険会社はいつまで治療費を支払ってくれるのか」という問題が出てきます。

残念ながら、症状が残る限りいつまでも、というわけにはいきません。

任意保険会社は、毎月の治療状況を見て、いずれ治療費打切りを宣告してきます。

しかし、治療費の支払可否の判断については、任意保険と自賠責保険の判断が異なる場合もしばしば見受けられます。

任意保険会社は「支払わない」と言ったのに、自賠責保険に被害者請求してみると支払われる、ということがあり得る、ということです。

自賠責保険への被害者請求を利用することで、保険を利用した通院を継続できる可能性があります。

※被害者請求を行うことで必ずしも治療費の支払いを受けられるものではありません。また、個々の事例における法的判断については弁護士の先生の職域となります。

●被害者請求の際の注意点

繰り返しますが、被害者請求したからといって必ず治療費が支払われるわけではありません。

任意保険による対応から自賠責保険への被害者請求に切り替える際は、下記の点に注意が必要です。

①治療費は、原則として被害者が一旦立替える

被害者請求の場合、基本的には任意保険のように「窓口負担ゼロ」とはいきません。

原則として、被害者自身が治療費を立替え、後から返してもらう形式をとります。

②自賠責保険には支払限度額がある

本事例の場合、「傷害に係る損害」の請求となり、その支払限度額は120万円です。
※過失割合が7割以上と認定されると2割減額され、限度額は96万円となります。

この120万円は、治療費だけでなく、通院慰謝料や休業損害等を含めたものです。

治療が長引き、損害額の合計が120万円を超えた場合、それ以上の支払いを求めることはできません。

治療が長引くことが想定される場合は、健康保険の利用も検討すべきです。

なお、自賠責保険で賄いきれない分の損害は、請求可能であれば任意保険会社に請求することとなります。

※任意保険との示談交渉を代理で行うのは、弁護士の先生のお仕事です。

また、支払限度額内で治療終了できた場合でも、任意保険会社に請求できる分が残っていないか、弁護士の先生へのご相談を強くお勧め致します。
※弊所では任意保険への請求や損害額の算定に関するご相談は承っておりません。

③治療費が支払われないパターンもある

既に述べましたが、被害者請求して必ず治療費が支払われるわけではありません。

審査の結果、「支払不能」という回答が返ってくる可能性も考えられます。

支払不能となる理由は事案によって様々です。

●ご相談後の流れ

上記注意点についてご説明し、ご納得いただいたうえでの受任となりました。

被害者請求を利用して通院する間、相手方任意保険とのやり取りに関しては弁護士の先生にお願いしました。

結果として、半年程度(治療費打切り後4か月程度)の治療費が認められました。

お客様の症状も、日常生活に概ね支障がないレベルまで回復しました。

手続終了後は、弁護士の先生に引継ぎを行いました。

●終わりに

まだ症状が残っているのに治療費打切りを宣告されると、

「どうしたらいいんだ?」

「この痛みを抱えたまま働き続けないといけないのか…」

など、暗い気持ちになってしまうと思います。

でも、まだあきらめないでください。

自賠責保険を活用することで、よりよい解決を迎えられる可能性があります。

泣き寝入りしてしまう前に、ぜひ一度ご相談いただければ幸いです。

上記事例の他、交通事故(自賠責保険への被害者請求)業務の取り扱い実績多数。
どんな些細なご相談でも承ります。

交通事故:保険会社に後遺障害の手続を任せたら非該当。納得ができない。

【概要】

●依頼者

20代男性 会社員

●ご相談内容

赤信号で停車中、後ろから来た車に追突され、そのはずみで前方の車両にも衝突した。

いわゆる「玉突き事故」の真ん中にいた状況。

そのまま救急搬送され、頸椎捻挫と診断される。

事故翌日以降は、自宅近所の外科医院に通院。

約7か月の治療を受け、症状固定。

後遺障害の手続は、任意保険会社に任せる形(事前認定)で行った。

結果は「非該当」。

しかし、未だ日常生活に支障が出るレベルで、首・腰の痛みが残っている。

非該当という結果にはとても納得できない。

異議申し立てが可能と聞いたが、また保険会社に任せるのは不安なので、専門家に相談した。

【行政書士による解説】

●後遺障害の手続

交通事故から概ね半年以上経過して「症状固定」の診断を受けると、その後、保険会社から治療費の支払いは受けられません。

後遺障害等級認定のための手続を行い、認定された等級に応じた補償を受け、事故は原則として「解決」されます。

ご相談者様は、後遺障害等級認定手続を、相手方任意保険会社にお任せする方法で行いました。

このやり方は、一般に「事前認定」と呼ばれます。

手間がかからない一方、状況によってはデメリットもあり、
本件は、そのデメリットが如実に現れてしまった事案といえます。

●事前認定のデメリット

「事前認定」は、任意保険会社が後遺障害の手続を代行してくれるものです。
被害者は病院で「後遺障害診断書」を書いてもらうだけでよく、
あとの必要書類は任意保険会社が用意して、審査機関に送付してくれます。

確かに手間はかかりません。

しかし、後遺障害の審査は、原則として書面のみ(醜状障害を除く)。

書面に書かれていないことは「存在しないもの」として扱われます。

後遺障害の手続に際しては、審査機関に正確な情報が伝わるよう、情報に漏れがないか確認して誤りがあれば修正する等、丁寧な書類作成がなされるべきです。

任意保険の担当者は何件もの案件を同時に扱っています。その関係上、十分に丁寧な書類作成がされているかという点については、疑問の余地があります。

これは、審査機関にあるがままの症状が正確に伝わらないまま審査がなされる可能性があることを意味します。

「痛み」「しびれ」は目に見えません。そういった目に見えない症状で悩む被害者にとって、書類が正確に作成されないことはとても大きなデメリットとなります。

●結果に納得がいかない場合は?

今回のように、審査結果に納得ができない場合は、再申請が可能です。

この再申請は一般に「異議申し立て」と呼ばれますが、その実は「やり直し」にすぎません。

なお、再申請を事前認定で行うこともできます。

ただし、その場合はやはり任意保険会社にお任せする形となり、
保険会社がどのような書類を提出したのかは基本的にわかりません。

今回の場合、いちど「非該当」の結果が出ています。ご相談者様が「また保険会社任せでよいのか?」とご不安になるのも無理はありません。

保険会社任せが不安な場合「被害者請求」という方法があります。

被害者請求であれば、資料を自分側で用意することができます。
そのため、手続前に、提出書類を存分にチェックすることが可能です。

しかし被害者ひとりでは何をチェックすべきかわからない場合が多いかと思います。

この点、当事務所では過去の認定実績に基づいて、症状が「あるがまま」伝わるような、丁寧な手続をすることが可能です。

異議申立を検討される際は、是非ご相談下さい。

【ご相談後の流れ】

依頼者様の症状を審査機関に正確に伝えるべく、診断書等の書類をチェック。

自賠責保険会社に被害者請求で再申請を行いました。

結果「局部に神経症状をのこすもの」として、後遺障害第14級9号が認められました。

手続後は、弁護士の先生への引継ぎを行いました。

【終わりに】

後遺障害の手続においては、一度で適正な評価が得られない可能性も大いにあり得ます。

今回は、被害者の現状を丁寧に伝える手続によって、良い結果を得ることができました。

諦めてしまう前に、一度ご相談ください。

上記事例の他、取り扱い実績多数。どんな些細なご相談でも承ります。

交通事故:死亡事案で、過失が高く保険会社が対応してくれないケース

「息子が交通事故で亡くなった。でも、息子の過失が高くて、保険会社が対応してくれない…」

●依頼者

50代 女性

●ご相談内容

18歳の息子が交通事故に遭い、救急搬送された。懸命の救命措置も空しく、3日後に亡くなった。

息子の過失が高いため、相手方任意保険会社は対応してくれない。

後日書類が送られてきて、「自分で被害者請求してください」とだけ言われた。

なかなか気持ちの整理がつかず、手続しないまま一年が過ぎた。

ただ、病院の治療費が未払いとなっていることもあり、いつまでもこのままにしておくわけにはいかないと思っている。

被害者請求の手続について相談したい。

●家族が亡くなって、冷静に手続できるか

突然、家族が交通事故で亡くなってしまったら…。そのショック、悲しみは計り知れるものではありません。

まして、今回の被害者は依頼者様のご子息。交通事故にさえ遭わなければ、まだまだ輝かしい未来が開けていたであろう、18歳という若さでした。

精神的に追い詰められた状況下で、冷静に事務手続を進めるのは、至難の業と言えるでしょう。

ただでなくても、人が亡くなると、葬儀や様々な手続などで忙殺されるものです。

そんな中、「自賠責保険への請求」という、いかにも面倒に思える手続きが後回しになってしまったとしても、それを責めることはできないと思います。

●病院からの高額な請求、自腹を切るしかないのか…?

今回の事例で最も注目すべきポイントは「過失」です。

他のページでも解説していますが、被害者側の過失が高い場合は、任意保険会社が通常通りの対応をしてくれないケースがしばしば見受けられます。

任意保険会社が対応しない以上、救命措置に要した費用の請求は遺族宛になされます。

しかし、今回の事例では治療費が約100万円(自由診療の場合の金額)に及びました。

仮に健康保険を適用させたとしても、遺族の経済事情によっては、簡単に支払うことができない金額です。

また、諸事情により、被害者側の人身傷害保険を利用することもできない状況でした。

本事例のようなケースで保障を受けるには、自賠責保険を利用する他ありません。

自賠責保険(強制保険)においては、相手方に1割でも過失が認められるような事例であれば、治療費や慰謝料等の補償を受けることが可能です。

※自賠責保険においては、手続の過程で審査機関によって過失割合が判定されます。弊所にて過失割合の判断を行うことはありません。

補償を受けるために必要なのが、被害者請求(自賠責法第16条に基づく請求)です。

今回の場合、自賠責保険からは死亡に係る損害(支払限度額3000万円)と、死亡に至るまでの傷害(治療費等。支払限度額120万円)を請求可能です。

※自賠責保険によって認定された過失割合次第では、「重過失減額」が適用され、支払限度額が減額される場合があります。

●被害者請求のやり方は…

今回、相手方任意保険会社は、自社では対応できない旨を伝え、被害者請求用の書式を遺族に送り、「自分で被害者請求してください」とだけ伝えたようです。

本事例に限らず、任意保険会社が対応できないケースでは、「被害者請求してほしい」と言うものの、その詳しい方法については教えてもらえなかった、というパターンが多いように見受けられます。

自賠責保険と任意保険が別会社というケースも多いので、やむを得ない部分もあるかとは思います。しかし、やはり被害者としては不親切に感じる部分ではないでしょうか。

●ご相談後の流れ

ご相談を受け、被害者請求手続きを受任しました。

今回は請求権者が複数いらっしゃる事案でしたので、その全員から委任状を頂き、
自賠責保険会社への被害者請求を行いました。

委任状を得るにあたり、法的判断を伴うご質問が発生した場合は、弁護士の先生にお願いして、法的知見を踏まえたご説明をしていただきました。

依頼者様および他のご遺族様には慰謝料等が支払われ、未払いとなっていた病院の治療費も無事支払われました。

手続終了後は、自賠責保険の支払限度額を超えて支払われるべきものが無いかの確認のため、弁護士の先生へ引継ぎを行いました。

本事案において、被害者請求は、交通事故が真の意味で「解決」を迎えるための重要な第一歩でした。

依頼者様の、ご家族の死を乗り越えて前を向こうとしたそのお気持ちが、事故を解決に導いたものと考えます。

●あまり放置しすぎるのは厳禁

今回は事故から1年以上経過した案件でしたので、時効の問題についても触れておきます。

自賠責保険への請求期限は、下記の通りです。

傷害に係る損害(治療費、入通院慰謝料など):事故翌日から起算して3年
後遺障害に係る損害:症状固定日翌日から起算して3年
死亡に係る損害:死亡日翌日から起算して3年

本事例の場合、死亡から約1年程度でしたので、十分に間に合うタイミングでした。

場合によっては、同様の事例で、

「治療費を自分で立て替えて、被害者請求しないまま時間が経過してしまった」

というケースも考えられるかと思います。

「あの時払った治療費は返ってくるのか?」といった疑問があれば、是非お気軽にご相談ください。

●ご家族の「死」と向き合うために

冒頭で申し上げた通り、大切なご家族が突然亡くなった状況で冷静に手続ができる方はそうそういらっしゃいません。

手続での面倒事は、是非専門家である行政書士にお任せください。

行政書士として、ご遺族のお手間、ご心労を少しでも減らすため、手続の面からお手伝いできれば何よりの幸いです。

上記事例の他、取り扱い実績多数。どんな些細なご相談でも承ります。